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カテゴリ:小説( 31 )

 

その日、朱音は空を飛んだ/武田綾乃

信頼できない語り手ばかり……!
感想!長い!

ずっと夏川莉苑について考えていてやっと噛み砕けてきた。
「いじめ」を抱えているのかよ……。
そこだけ唯一おばあちゃんの教えに背いたかもしれない夏川莉苑の汚点がアンケート結果なのか。

好奇心と、復讐心。どちらもたぶんある。
復讐ってなにに対する復讐なのだ? というのがまずあった。読み込みが浅かったので……。
「世界は生きている人のためにあるべき、なのに、死人が生者の世界を乱すなんて許せない」という復讐なのか。
死んだら復讐できない、生きているうちにしか。その生きている瞬間だけが、チャンスだった。

でも、人の心を踏みにじった夏川莉苑、正々堂々とやったのが最善の選択ということに迷いはないけれど、でもフェアだっただろうか? あの場面で人の心への復讐は、果たして「いじめはだめ」との教えに背いてはいないだろうか?
……という解釈でよろしいか。まあそう思っておく。
そうであるならば夏川莉苑おまえは罪を背負った子供にならねばならない。
自分の罪を反芻して、おまえだけが──高野純佳でさえ解放されるのに──朱音を忘れずに生きなければならない。
夏川莉苑、おまえは憎き死人に乱される。じわじわと。生きているのに。生者のための世界にいるのに。

……いやアンケートさえなければこれは完全に夏川莉苑勝者だったのに……。
夏川莉苑自身はただ純粋に答えのない問いとして沈思黙考してるに過ぎないとしても。(決意したとて、いつまでも子どもでいられるだろうか?)

好奇心においては完全勝利を収めているか。
人が死ぬときに見る夢を。
あるいは朱音が描いた出題意図とは別ルートの解法を。
ドクゼリの夢を見せるために! 出題者に「解けたよ!」と見せびらかしたい無垢な子供。



いやーなんかね、このまえ『十二人の死にたい子どもたち』を読んだんですけど男女キャラの配置が引っかかるったら。女6人中3人ヒステリーて。
せっかく面白い謎かけなのにな~と。いやこの作品に限ったことではないのですがもちろん……。

だから男がひたすら「侮辱」される作品読むと癒されますね……。
中澤あけすけミソジニストすぎてもはや楽しいですが、中澤のような男にとってなにが侮辱にあたるかといえばもちろん女に相手にされないことなわけで。自分の優位を保つには劣等種たる女が必要だから。
通常なら中澤は男の中でも優位だから劣等種なんか気に留めなくてもいいはずなのに、塾講師に反抗したばかりにおまえの生殺与奪は女に奪われたのだ。
夏川莉苑にも川崎朱音にも細江愛にも最後に桐ヶ谷美月にも!
並べるとすげーな。武田さんどれだけ中澤の鼻をあかしたいの……大好き……。


だからねー!!私はだんぜん愛が好きです!!
もう、もう、もう、私は、男作家の小説の中で描かれる細江愛のような女が、大嫌いなのだ。

美人でケバい→頭からっぽのバカ
美人でケバくて女にあたりが強い→女コエエ
美人でケバくて女にあたりが強いが男とは仲良し→本人は純粋なのに女には嫌われるかわいそう俺が守ってやらねば
美人でケバくて女にあたりが強いが男とは仲良しでたったひとりの男に純情→"そんな女"を支配した俺

どこを取っても男を慰撫する造形になる。
主人公でないのにそういう女を女と付き合わせたの最高では……?
たったひとりの男に純情で別れの往生際さえ悪かったのに「別れたときは悲しかったが今の愛に彼は必要ない」とばっさり。
これだけでも充分気持ちいいのに図書室で美月が愛の腕に絡んで中澤を牽制、そして愛がそれを「可愛らしいなあ」と言ってるのがもう……こんな感情……女しか共鳴できないじゃん! 正直ここのシーンに限って言えば恋人でなく友情関係ながらにそういう牽制と悦があっていてほしかったと思うほど。
中澤の章で愛の薄っぺらなテンプレ女像が描かれれば描かれるほど、「しかし今は女を求めている」落差がたまらなく小気味いい。
男性作家の目に映るテンプレ女への批判にもなっている。女はほんとうはもっと豊かなのだ。
中澤の章へ行く前にすでに愛の肉づけは完了している。
主要女キャラがみんな美人設定なの、男への復讐ですよね……。
男が手に入れたがる「価値ある」女が誰も男に目を向けない、ざまあみろと。

しかし私は異性愛予防線に抜かりない悲しい業を背負っているので、中澤目線でまだ未練があるかのようなそぶりをした愛への警戒がとれなかったりした。章題でほっとした……。
だって美月のことは好きにやらせてるだけで本当はまだ中澤が好き……って解釈にする、女テンプレート異性愛マグネット、よくあるじゃないの……。この社会を信用していないので。まあ、よかった。




『女の子を殺さないために』(川田宇一郎)を相手どって叫びたい。
これが女が女を愛する世界だ!!!!
女は「殺される」客体じゃねえ!女は女を殺すし女は自分を殺すんだ。
『その日、朱音は空を飛んだ』、見事に『女の子を殺さないために』のカウンターをやってのけた。

以前まとめたフィクションの中で女の子が殺されるメカニズム。

女の子が落ちる(しばしば男とのセックスによって処女でなくなる)
女の子がママになりゆく
女の子が殺される(死ぬ/消える/去る)
女の子がママとして周縁化されずに包囲網を突破し世界のしがらみから解き放たれる(ことで受け手の解放への欲を満たす)

あはは。
ていうか、フロイトの理論が特定の地域・時代でしか通用しない概念だったように、『女の子を殺さないために』も特殊の条件下にしか適用できない理論なんだろう。
その条件とは「男社会」である。
だって女の子を殺さないために、だもん。誰が殺すの? 女の子じゃない人でしかありえない。ここでは男だ。

殺される女の子の痛みと叫びを描いたのが山戸結希だとしたら、武田綾乃は殺される女の子の残酷な"真実"を描いた。
このふたり、女が女を欲望すると知らしめたこと、元来美しく象徴化されてきた殺される女の子に語る口を与え生身を暴いたことが共通している。

第一章で意図的にベタな「女の子が殺される」物語解釈をやってるんだよね。
朱音が中澤と付き合ったから中澤を好きな純佳が嫉妬して朱音を自殺に追い込む。
世界の中心は男。
朱音は男によって処女でなくなりママに近づいたので落下し、ピュアな魂が最大限に崇高化されるように死して、この世の呪縛から解放されるカタルシスを得る。俺のこと大好きな若く美しい女のままで死んでほしいからね!!!

もちろんそんな陳腐な話ではないことは最初からわかっている。
カウンターなのだ。
二週間かそこらの交際期間でさすがにセックスまではしてないかな……。してたら中澤が地の文でさらっと愉悦しそう。細江愛のときのように。でも朱音の必死さからいってしててもおかしくはない。どちらにせよ本作は「男の手によって処女を失ったことでママになりゆくから死ぬ」物語にはならない。
おまえは女を愛する女の駒だ。

ママになっていかないならしがらみ化(おばさん化)する心配もない処女。処女は処女のまま美しく、男にとって価値がある。にもかかわらず死ぬ。
『女の子を殺さないために』では「なぜ女の子を落下させたがるのか?」と問いを立て「この世のしがらみから解放されるには落下するしかない、落下できるのは女の子しかいないから」と回答しているが、これも、男の(あるいは死を身近に感じたことがない者の)手前勝手な幻想に過ぎない。殺される心配がないから死をロマンティシズムにできる。まあ、骨子としては落下させるだけさせて殺さないラブコメをやっていくのが女の子を殺さない秘訣だよ、という論ではあるが。

閑話休題。
『その日、朱音は空を飛んだ』は、「崇高な目的に耽溺して落下し愛のために死んでいく女のロマンティシズムを粉砕する」話だ。
解放されるはずがない。
朱音に語る術が与えられなければ暴かれなかった"真実"。
かつて物語に殺されていった女の子たちの、生身の声。
ロマン、カタルシス、堕落論といった陶酔では生身の人間の死を捉えることなどできない。

「彼らはドラマチックな物語に飢えている。朱音の死を単なる娯楽として消化しようとする他人たちに、莉苑は強い嫌悪感を抱いた。川崎朱音は名前のない少女Aでは決してない。そのことを、どうして理解できないのだろう」

夏川莉苑が露呈させたのは女の子が落下して死ぬという過剰に甘美な物語への嘆息だ。処女を失いママになるから落下してしがらみから解放される少女Aなどどこにもいやしない。

こうして『その日、朱音は空を飛んだ』は『女の子を殺さないために』が想定しえなかった隙を突き、女の子が殺される物語を解体していった。
というか、女が死ぬ話を女の視点からやろうとしたら男社会の論理は解体されざるをえないんだよな。どう足掻いても主客転倒するから。



……どうにも『女の子を殺さないために』がもやもやしてて語ってしまったけど初読の感想書いとかなきゃ……。

とにかくとにかくエゴの話だったみんなエゴ……。
誰のエゴが勝利したか? というよりは、誰のエゴが敗北したか? なんだよな。
一ノ瀬祐介、中澤博、川崎朱音……。
世界の中心は男ではない。しかし、朱音でもない。

しかし私も俗人なので夏川莉苑が唯一揺るがされた瞬間によろこびを覚えてしまう。時代に疎いせいで動画に自分が映りこんだと聞いて……。花びらのような何かが……。

いくつかゾッとした箇所はあって、というかホラー小説ではというくらいゾッとする。
人死にを目撃してすぐ世界は生きている人のためにあるからと優先すべきは理央だと動く夏川莉苑(そしてあとでわかるダブルミーニング……)。
純佳の章で細江愛を真似はじめた意味がわかる朱音。
「死んだあの子に口はなし」。
思った以上に朱音を見放し冷酷になっていった純佳が明かされる……。

章題が各章最後に置かれるのこええ。
真実の曲げ方が多少強引でも、純佳は、それを信じたいから信じてしまうんですね……。

しかし伏線の置き方はめちゃくちゃ上手いんだけど、回想の連続、同じ時間を別のキャラで何度もなぞり時系列が右往左往するから、キャラも朧気にしか見分けられず途中どの子がなにをしたかとかごっちゃになって混乱したな。わかってしまえばなんのことはないけど。
そのせいか朱音が愛を真似した理由がわかったときあんなに衝撃だったのに、電子で読んだから最後朱音の遺書で終わるのかと思って「あれ? こっち本音? ち、ちがうのか?」ってなってしまってこれはもっと読みこめればよかった悔やまれる……しかしミステリーは初読あまり読み込まないほうが後々の衝撃がでかいことが多いからジレンマだ。遺書は朱音の字で読みたかったな。

あとなんだろう、よくも悪くもエゴイズムが全部言語化されているから、これは、映像媒体で婉曲表現を読み取るほうがきっと満足な物語体験ができたかもしれないな、と思った。
例えば近藤理央の「呼び出しを無視したって、絶対みんなに嫌われる」とか、ここはわざわざ言語化されないほうが、近藤理央のエゴと嫌らしさが伝わる気がする。

細かなことは差し引いても面白かった。これはよい。
好みの百合ではないが最高のバランスでした。

by jinloturu | 2018-12-02 14:36 | 小説 | Comments(0)  

乃木若葉は勇者である上下/タカヒロ/朱白あおい

機会があれば見ようと思ってたゆゆゆを偶然9月にdアニメで見て、偶然秋からわすゆの始まることを知り、たがわず毎週張り付き、百合の噂につられ銀ちゃんイベントからゆゆゆいを始め、偶然dアニメからもらったポイントが余りのわゆを購入……。
流れるような偶然の末路で読み終えた。




うっわ……。きっつ。
まさか4人ともだなんて。
ゆゆゆいでうたのんが若葉たちと同じ制服着てたから、もしや通信が途絶しても生存の可能性があったりしないかなと思ったんだよ。甘かったわ。
星屑程度に大苦戦を強いられる……。

描写が下手だな、と思うことはある、残念。だが千景まわりの話、描写さえうまくいってれば、めちゃくちゃ好き。
そうだよ。
聖人君子でない、いい子でない、内省しながらも劣等感を抱えて基本的自尊心が育ってないゆえに自己中心的なもろくて泥臭い子が見たかったちょうど。

なんで友奈ちゃんのことそんなに好きなのーー!!それが知りたいよ!
こういう子が無条件に信頼と思慕を寄せる理由が見つからないよ知りたいよきみみたいな子の百合が見てえんだよこっちはよ。
千景の家庭環境がこうすげえ生々しかった、創作で適当に悲惨さを与えられる場合の設定じゃなかった。不倫したのが母親側とか。

なんかさあ、ほんの些細なちがいというか、千景はたとえ誤っても、こういう死に方をしなきゃならないいわれなんてどこにもないじゃない、装束を解かれさえしなければ生き残ったかもしれないじゃない、そういうちがい、間一髪だとかそういうことじゃなくて、ひとつひとつは些細な悪い要因が、後手後手の状況で、こういうふうに顕在化してしまったからこそあんな無惨で惨めな死に方をしたわけじゃない、でもそういうふうになっていい理由なんてどこにもない。
でも、なってしまった、陥ってしまった、余裕がないからこそ。という。そういう時代だという。
描写さえうまければなーーーーーー!!!
演出さえ心にくればたぶんどハマりしてたと思う。
破ることのできなかった卒業証書とかそれは……とてもよく……つらい……。
千景の手記全削除とかもう……。

球子と杏の死に方もそんなんむっごいわ。
イラストがマイルドだからほっとしてしまったけど、別のむごいラフがあったという、こちらを見せられたほうが没入は深かったと思う。

園子ちゃんの先祖だということで、直系とは言うなよ、と思った。
勇者であるシリーズ、キャラ同士集まりゃ巨乳を羨ましがり恋に思いを馳せるから気が気でない。百合オタに媚売るなら売りきれ。異性愛を匂わすな。
まあうまく隠されてよかったけど。

テーマ、「みんなを守るから人間は強い」とか、「復讐心からの脱却」とか、そういうのは陳腐だなと思った。
最終戦で友奈と若葉の絶叫大立ち回りはアニメ夏凜のリスペクトとか、これは声つきで見たいなあ。やはり描写が弱い。

不満はあるが最後に若葉とひなた決意に手をつなぐとかかっこよかった。
弱さを抱えているのはよい。

by jinloturu | 2017-11-26 20:43 | 小説 | Comments(0)  

いまさら翼といわれても/米澤穂信

うっ……やられた……。
千反田さん、なんだかんだいって館に戻ってくるのだという願望持ってしまっていた……。
わからないように描かれてるけどあと4分。
いまさら翼といわれても……!!
奉太郎には説得できる資格も手札もない。
やられたな~くそ~。



そ!し!て!
奉太郎がかわいすぎるんだけど!?かわいすぎるんだけど!?!?
序盤からかわいくて3ページめくったところで一ヶ月くらい読めなくなったよね。
えっなんなん……米澤さんほうたる萌えだよね……明らかに自キャラ萌えでは……でなきゃサービス精神旺盛すぎるでしょう私がほうたる推しだから目が曇ってるわけじゃないよね二次創作読んでるのかとおもったわ……。
『鏡』は雑誌のときに読んだ。
ネットで「アニメに影響されてる逆輸入だ」と言われてて、でもそんなに実感していなかったんだけど、今読んだらそうだねこれは明らかに京アニ仕様の奉太郎だ……!!
かわいい!!つらい!
全編にわたって奉太郎を掘り下げた単行本でありがたすぎるな。

まずこんなに奉太郎がものを食べてる描写がね。これでもかと。
「もふもふ」だよ!?目を疑ったわ、トーストを食べる擬音が「もふもふ」!
もそもそですらない、あざとい奉太郎あざとい……。
焼きそばもトーストも冷やし中華も作って食べる奉太郎……そしてそれは必ず他人との関わりへと繋がっていく。コーヒーもラーメンも。
そうしてね、リフレインされる料理描写がね、『長い休日』に結実するのがもう最高。
「最低限の作業をなんてことないようにやっているけど意外と料理するんだ、そして面倒がらないんだ?」っていう印象を植え付けてね。
いやそうなんだよ本当に奉太郎の家事をこなすところも試験前にきちんと勉強するところも誰も見てないとこで他人の買った『氷菓』の代金を立て替えるところも大好きだよ……。
ついにその謎が明かされたのが感慨深い。
かなしかったんですね。
人の気持ちに敏感で、でも、人が自分をどう見ているかには鈍感な奉太郎だからこそ、気づいてしまったときにはその本心の棘が深く刺さってしまったのだろう。
大人しくて目立たない女子に、っていうミスリードも。
優しいんですよ奉太郎は優しいんですよ自分が少しばかり損をしてでも人を気遣うんですよ損をしたなど思ってないんですよ「小木はヘリが好きだった」なんて言いたくないんですよ。
だってただ言わなきゃいいだけじゃない。今後人に言いふらさなければ真実なんてどっちだっていいじゃない。
言ってしまったことへの反省こそが奉太郎を奉太郎たらしめている……。
その奉太郎が、やたらにえるに歌えなんて強要できるはずがないのよな……。

そして古典部4人みんな義理堅いな。なんて健全な高校生だよ。
だからこそ義理を破る(破りかねない)摩耶花とえるが苦々しくこの話を飾るのだな……。

奉太郎についてはまだまだ語れるな……やめよう……「フライパンを洗っていたはずだ」とか最高かわいいよね……。

by jinloturu | 2017-01-07 20:15 | 小説 | Comments(0)  

王とサーカス/米澤穂信

衰えない鋭さ……。
山場は殺しの謎解きシーンじゃない。そのあとだ。そのあとが米澤穂信だ……。
荷車、荷車ね……。
憎しみ。報道への、記者への、憎しみ。そして矜持。
『真実から10メートル手前』の万智よりもずいぶん精神が幼い。報道に対する姿勢。匙加減うまいなあ。
『さよなら妖精』まんまと読み返したくなる。

キーワードのちりばめがそのまま伏線の伏線になってるの面白いな。
キーワードで物事を繋いで、「あっこのワード前にも出てきた、なんだっけ」の想起を繰り返させる。
太刀洗、の意味も。

by jinloturu | 2016-11-21 18:13 | 小説 | Comments(0)  

ゼーガペイン 喪失の扉

前から持ってたんだけど、前作『忘却の女王』がつまらなかったのもあるし、表紙のキャラがルーシェンに見えなくて何故か別の人「マオ」が主人公だと思ってたから愛着湧かないし、つまらなかったし、断念してしまっていた。
ADPにより久々に取り出してきた……。

前半:あっ記憶にあるよりか面白いな
中盤:ルーシェンの過去だー! 資料的に面白いなー!!
後半:結局オリジナルキャラにかけらも愛着湧かなかった……つまらない……

でした……。ルーシェンの過去とゼーガの詳細設定は資料的に面白かったですよ。
ADPでも出てきた地球地下工場の設定は『忘却』のほうなんだっけ?

ルーシェンの設定盛りすぎて笑った。主人公だー。
アニメ版はあっさりシンに格闘で倒されててちょっと可哀想で笑ったのに大活躍じゃーん。ていうかセレブアイコン色々できるんだな……。
ルーシェンは世界を統べるばかりか完全に責任の一端を背負っていたわけね……。ナーガがオルムウィスル撒こうと着想得たのだって。
こういう世界の重役である人間が幻体化して1パイロットやってるだけでルーシェンの熱さがわかるよね。まあカノウトオルもやってたくらいだしパイロット不足なのはそうだろうけど。
ていうかルーシェンがキョウに惹かれた理由もわかるというもの。こいつ頭よくて腹に一物なくて純粋で自分にない発想持つ男が好みなんだな。

あとサーバーに入った幻体がその記憶を失ってる理由が一番の衝撃でしたね……。
考えてみればそうなのだけど……。
AIと幻体の差を作ってないザミン・ウドサーバー、テーマ的にわくわくするけどそのへんは完全無慈悲でしたね。

by jinloturu | 2016-11-19 23:33 | 小説 | Comments(0)  

犬はどこだ/米澤穂信

面白!かった!!
寝る間を惜しんで一気に読んだ。
真夜中だったからラストにぞっとしてうまく睡眠導入できなかった。それくらいの余韻が残る作品。

私米澤さんの文章技術演出方法好きだわ……。
GENという匿名人物へのびっみょうな寒々しい距離感を表現するのに「エビスはサッポロ」「目が乾いた」「ぬるいビールをらっぱ飲み」……婉曲表現心に迫る。
徐々に事の次第が明るみに出てきて、ハンペーが電話を取ったときの鳥肌ときたら……そうだよこの構成力だよこの伏線回収畳み掛けだよ……。そしてそれは怪しいものや人が他にもちりばめられていたから隠蔽されていたことであり。

なにがしか後味悪いのだろうなあ、桐子が殺されるのはやだなあ、と警戒していたらこれだよこええよ……。
ほんとああいう「ホラー」を書く筆力な……すごいよな……。

桐子、警戒心強かったわりにネットに個人情報書きすぎじゃない?というのは気になった。桐子くらいならあれらが個人情報になりうるって判断できるはず……。
ただまあ、ああいうネトスト行為は今でもいくらでもできるからひとつの脅威としてね……ひとつも失いたくなどなかった……。
要素の絡み合いを実に堪能できた良作でした。

by jinloturu | 2016-07-13 02:21 | 小説 | Comments(0)  

真実の10メートル手前/米澤穂信

あとがき先に読むタイプなので『さよなら妖精』かあ……とまず思ったけど、ほとんど筋忘れてるから万智と言われてもぴんとこなかった……勿体ない。
……が、『ナイフを失われた思い出の中に』でユーゴスラヴィアの国名が出てきたときはうわあ……という焦燥感があった。

一番印象的な話は『名を刻む死』ですね。
構成すげえなあ。
「わかりやすい構図」で無理にでも納得したほうがいいときもある。気にしていたその理由。

全体を通してジャーナリズムとは、というテーマ。
『正義漢』なんか話自体は地味だけど万智の「いやらしい笑み」を問うことで性根と大衆根性が見えて物語の深みが増している。
ただの真摯な良いライターではない。考え続けなければならない。
記事を出すことで、貶めもするし、救われもする。

by jinloturu | 2016-07-13 02:20 | 小説 | Comments(0)  

リカーシブル/米澤穂信

うっっわあああめっちゃしんどくて面白かった……。


米澤作品読むと自分の許容できる鬱としんどくなる鬱の種類がわかるな……。
自我否定とか、「特別な自分というアイデンティティーの粉砕」系はいけるしむしろ好きですもっとやれって思うこともあるけどこれは……居場所の完全喪失はおまえ……。
もう、初めから肩身が狭くて不安定で、世界から拒絶される恐怖を神経質なほど感じている主人公を描いているのに、話が進むにつれて少しずつ剥がれ落ちるように足場を失っていく様が……最後に救いとなるものはなにもないだろうという信頼(信頼です)があったから余計しんどい。
ママが放心状態で居間を出ようとしてハッと離婚届に飛びついて照れ笑いする描写……しんどい、しんどくて最高。

だから、あんなに疎ましく思っていたサトルがハルカが完全に狂う直前かすがいになる――その反転に至るまでの心理過程がすごい。


前半は慎重に伏線を張り巡らせる、なにかが異常であると警告しながらモヤモヤさせたまま進む。
そのモヤモヤが晴れる瞬間への期待と信頼を持ちつつも辛抱強く退屈をやりすごした。
そして三浦先生の事故から収束に向かって加速していくにつれどんどん引き込まれ、ひとつの伏線が回収された瞬間の、快感。
この構築が病みつきになる……。
そしてメインディッシュの謎解きの、渾身の勝利の確定。明かされてく真実と繋がる一本軸の心地よさ。
しかしそれだけに留まらず、ハルカが疎外されたこの世界でこれからも生きつづける諦念も、織り混ぜて。
ああ上質なエンタメ大好きだなあ……。

不思議な現象→種明かし→しかしひとつだけ現実的とは言えない不思議な疑問が残った……というラストは定番だけど、米澤さんはすべて堅実に現実でまとめる作家だと思ってたので、少し驚いた。
ともかく旅のお供の小説として最高でした。

by jinloturu | 2016-03-28 15:19 | 小説 | Comments(0)  

聖の青春/大崎善生

この淡々と読みやすい文章が好き。
ノンフィクションだそうだけど、将棋のことなにもわかんない私でも作中の空気を感じ取れていて、なんだか当時の将棋界や関西あたりの人情事がそのままパッケージングされているみたいだった。
村山聖という人となり。
常に死を見つめ死と付き合ってきたがゆえの冷静な眼差しが時折もたげる瞬間にびくりとなる。
偉大というより、強くて強情で、しかし愛され静かに惜しまれる人だったのだなあと。

by jinloturu | 2016-03-22 20:38 | 小説 | Comments(0)  

前世の記憶/高橋克彦

表題作は転生ものでした。残念。
でもなんで人口の多いところで前世の記憶持つ人が多く現れるかとか面白かったな。無垢さと未練?
「母さんと僕を殺したね」
こえーよ!!昔この手の怪談話聞いて怖かったのか今でもその話強く記憶に残っているよ。
そういうよくあるホラーのつづきとして、な。
自分を殺した人の子供に生まれ変わってしかしそのせいで母が父を殺して苦役強いられ……というほのかな後味の悪さ、よかった。

by jinloturu | 2016-03-06 05:56 | 小説 | Comments(0)